慶應義塾柔道部の記
わが柔道部は塾祖福沢先生の奨励により明治10年(1877年)の春三田山上に開始せされ、爾来漸次隆達したものにして実に我国体育会の先駆をなせるもの也。
内に在っては和親一致塾風の涵養を謀り、外に在っては義塾精神の宣揚に努め、専ら気品の泉源、知徳の模範たることを期したるものなり。
乃ち、先生の「先成獣身而後養人心」「心身之順是柔道」と言える二つの成語の趣旨に随って経営し来れるものなり。
斯の如き光輝ある歴史を有する我が柔道部の部員たるものは深く之を肝に銘じ力を合わせて部の向上を図り流俗の外に立ち独立自尊の塾風に於て思想の中正を保ち将来国家の柱石、社会の儀表たらんことを心懸べきなり。
昭和7年5月9日
慶應義塾創立75周年記念 鎌田榮吉記