2022年度、慶應義塾體育會柔道部主務を務めさせていただきました小野佑眞です。1年間主務として、4年間選手として、10年間塾柔道部員として、慶應義塾體育會柔道部という最高の学び舎に籍を置かせていただき、そして遂に卒業の時を迎えることができました。人生の青春をギュッと濃縮したような、甘くも苦い、何ものにも代え難い時間を過ごすことができました。ここまで辿り着くことができたのは、偏に家族と先生方、先輩方、後輩、同期のお陰であると、文章では表せないほどに、心の底から感じています。本当に、本当にありがとうございました。
普通部に入学以降、私は塾柔道部という環境に身を置き、その伝統と誇りを多分に感じ、自らの価値観を養うことができました。普通部では普く学び遊ぶことの楽しさを、塾高ではひたすらに己を鍛えることの厳しさを、大学では仲間とともに高みを目指すことのやりがいと難しさを学びました。時に刺激的で、時にドラマチックで、そしてたまに投げ出したくなる、でもやっぱり幸せな、そんな濃密な学生生活を送る中で、私のアイデンティティ、すなわち塾柔道部人という姿が確立され、今の私が出来上がりました。
主務を拝命した際、私はとてつもなく高い理想を抱いていました。自分の、自分たちの可能性を盲信し、最高の代を作り上げようと息巻いていました。様々な試練やハプニングがあったものの、主将の杉村を中心に試行錯誤を繰り返し、部の強化と運営に力を注ぎました。しかし、結果は出ず、史上初の早慶戦4連覇という目標は達成できず、全学団体ベスト8という目標もまた達成できませんでした。
「結果が全て。」大学1年生の時から杉村が言っていた言葉です。私はそれまで過程の方がより大切だと考えていましたが、今となっては大間違いでした。結果を出すことの大切さとその難しさ、この両方を痛感しました。一方で、「過程は次なる成功のために生かさないといけない。」ということもまた、杉村と話をした記憶があります。当たり前のことではありますが、塾柔道部を卒業する今、自身が得た10年間の全てを生かし、次なるステージで活躍するために、非常に大切な学びであったと感じています。
また、塾高時代の主将、大学時代の主務という経験を通して、「自分を律することの難しさ」と「組織を率いることの難しさ」を学びました。特に、コロナという激動の時代において組織を運営する中で、體育會柔道部は何を重んじ、何を切り捨てるべきなのか、何を追い求めるべきなのか。その中で自身に与えられた使命は何で、その達成のためには何をするべきなのか。これまで考えたこともない、数多の未知の問いに出会い、その解を仲間とともに探し続けました。そして、そのヒントはやはり「独立自尊」「社中協力」「自我作古」という義塾の精神と信条にあったのではないか、と今になって思います。先の主務拝命のご挨拶にて、私は偉そうなことを申し上げましたが、間違っていなかったと思います。
引退した今もなお、時折、あの日を思い出します。初めてあがった講道館の畳の感触、心臓の鼓動、鳴り止まぬ歓声、家族や友人の顔、そして涙を流す同期と後輩の顔。あの1日の全てに、小野佑眞という人間の半生の全てが詰まっていて、きっと、死ぬまで忘れることはないんだろうと思います。楽しかった思い出も、悔しかった思い出も、その全ての経験と環境に感謝し、塾柔道部の誇りとともに新たなステージへと進む、これこそが私に与えられた次なる使命だと、勝手ながら考えています。
バトンは既に託されています。新主将の都倉、新主務の望月を中心に、「奪還」を成し遂げて欲しいと、心の底から願っています。
相変わらず長い文章になってしまいましたが、これをもちまして卒業生挨拶と代えさせていただきます。改めまして、10年間本当に、本当にありがとうございました。引き続き何卒よろしくお願いいたします。