昨年9月の慶應義塾大学柔道部のワシントン研修で受け入れ側に回った古森義久(昭和38年卒業)です。

今回、その研修の結果ともいえる形で昨年の主将の前田賢慶君が個人の資格でワシントンに6週間ほど短期英語学習留学のため滞在しました。その間に地元の「ジョージタウン大学・ワシントン柔道クラブ」で週に3回、柔道の練習や指導にあたりました。この間、同クラブに支えられた形で柔道大会にも二度、出場し、それなりの成果をあげました。その内容をこんご柔道を通じての国際交流に関心を抱く学生諸君のための指針という意味をもこめて、以下、報告します。

わが柔道部は昨年、アメリカ東部への研修旅行として首都ワシントンを最初に訪れ、滞在延べ4日ほどの間に2回、首都中心部の伝統ある大学のジョージタウン大学構内の「ジョージタウン大学・ワシントン柔道クラブ」(以下、ワシントン柔道クラブと略)で同クラブ・メンバーたちとの合同の練習をしました。

ワシントン柔道クラブはアメリカ東部でも有数の歴史と実績を誇る道場で、大学のクラブと町道場が一体化した形になっています。メンバーは100人以上、常時、練習に出てくる男女だけでも50人以上います。このクラブは慶應柔道部の歴史に残る強豪選手だった宮崎剛先輩(8段)が師範の一人になっています。ワシントンに産経新聞特派員として在勤する私も7年前に宮崎先輩に奨められて練習を再開するようになり、以来、毎週、続けています。

昨年の慶應柔道部研修団の主将としてワシントンと同クラブを訪れた前田君は首都での滞在が印象に残ったらしく、卒業の前の休みを利用して、英語の集中的な勉強のために、短期留学を希望しました。もちろん柔道をしながら、という意味もありました。そこで私がワシントン柔道クラブの師範の一人、タッド・ノルス弁護士に相談すると、快くホームステイを引き受けてくれました。その結果、この1月末から3月中旬までの前田君のワシントン留学が実現したわけです。

前田君はこの間、英語学校に毎日、通い、個人レッスンまで受けて、英語力を飛躍的に高めたといえます。その一方、柔道でも毎週3回、稽古に出て、アメリカ人の男女選手たちと激しく、楽しく、練習を重ねていました。柔道での交流を通じ、同クラブのアメリカ人だけでなく、ペルー、ドイツ、韓国、フランスなどの出身の柔道愛好家たちとも仲よくなったようです。

この間、前田君は2月にはワシントンに隣接するバージニア州の柔道大会に出て、有段者の部で優勝しました。そして3月9日にはニューヨーク(NY)オープン国際柔道大会にも出場しました。この出場はワシントン柔道クラブのノルス師範らの奨めの結果で、交通費やホテル代も同クラブがぜんぶ引き受けました。

NYオープン大会は現在、アメリカ国内で開かれる種々の柔道大会では最も水準が高いとされています。2005年春には東京柔道学生柔道連盟の訪米団の選手30人ほどが参加しましたが、誰も優勝できなかったほどです。このときは、わが慶應柔道部の吉田幸裕、土井健太郎両君も出場しました。吉田君は一回戦で、土井君は二回戦でそれぞれ敗退しました。世界各国からの一流選手が多数、参加していました。しかしNYオープン大会はその後、強豪の参加がさらに多くなり、昨年には国際B級大会の認定を受けました。

今回もアメリカのトップ級の選手多数のほか、ブラジルやカナダからは世界選手権保持者数人を含む国際代表選手がこぞって加わりました。フランス、ドイツ、ウクライナ、イギリスなどからもその国の最強選手が出場しました。日本人選手では前田君以外には東海大学の稲葉将太(2006年の全日本学生体重別個人戦優勝)、同じく東海大OBの紫牟田武徳、大川康隆(2007年度USオープン大会二階級優勝)の3人が出場しました。稲葉選手が81キロ級で優勝、紫牟田選手が90キロ級で3位、大川選手が100キロ超級で3位という成績でした。

 100キロ級に出た前田君は一回戦でカナダの大ベテランのキース・モーガン選手と当たりました。モーガン選手は数々の国際試合で優勝を飾ってきたカナダのチャンピオンです。その試合の内容は前田君自身の報告に記されています。

 その戦績がどうあれ、社会人になる直前に柔道を活用して英語の学習だけでなく、国際交流の体験を積んだ前田君の努力は後に続く部員たちにも参考になるだろうと思います。(古森義久)

以下は前田賢慶君自身の報告です。

私、平成20年卒業予定の前田賢慶と申します。
3月9日(日)に2008 New York Open Judo ChampionshipsがNew YorkのNew York Athletic Clubにて開催され、-100キロ級に出場しましたので、試合結果報告をさせて頂きます。

1回戦 Keith Morgan(Canada)  一本負け(支え釣り込み足)

「試合を終えて」
お互い左組みで、相四つとなり、組み手争いの攻防となりました。相手の道着が小さく、私は全く引き手を持つ事ができず、試合中盤、肩車と小内巻き込みで有効を2つとられ、2分過ぎに支え釣り込み足で一本負けしました。

New York Open Judo ChampionshipsはBクラスの国際試合であり、世界選手権入賞者、アメリカ、カナダの最高レベルの選手が出場している非常にレベルの高い大会です。

私の100キロ級1回戦の相手は世界選手権5位になったことのある選手で、アメリカ、カナダでは大変有名な選手です。彼はよく日本に合宿に来るそうで、力だけでなく、しっかりとした投げ技を持っている日本的な柔道をする選手でした。彼は準々決勝まで勝ち上がりましたが、そこで現世界選手権優勝者(ブラジル)とあたり、ゴールデンスコアの接戦の末、負けました。そして、その世界選手権チャンピオンが最後まで勝ち上がり、優勝しました。他の階級を見ても、100キロ超級では井上康生選手に勝った事のある現100キロ超級世界選手権第三位入賞者(ブラジル)が出場しておりました。結局、彼が最後まで勝ち上がり、優勝しました。世界選手権入賞者が出場していない階級もありましたが、全体的に非常にレベルの高い大会でした。

私はベトナム国際という大会に出場させて頂いた事がありますが、その大会はアジア勢がほとんどであり、今回初めてカナダ、アメリカの最高レベルの方と試合をしました。肩車、捨て身技など、日本選手やアジア選手があまりやらない特殊な技、組み手を目にし、驚きと共に大変勉強になりました。反対に悪い点も見受けられました。外人はわざと体にぴったり合った小さい道着を着たり、袖口を内側に縫いこんだりして、相手に持ちにくくして試合に臨むことが多々見られました。そういった点は直すべき点であると思いました。

全体的に試合を見ていて、外人選手たちは勝ちに貪欲であると思いました。先に述べたように道着に関しては反則でありますが、投げ技によるポイントが取れないとわかると巴投げ、肩車など、とにかく技をかけ続け、相手に指導ポイント、悪い印象を与える攻撃に出ていました。どんなに見た目が悪くても技をかけ続ける点などは、見習うべきであり、外人選手の勝ちへのこだわり、貪欲さには感心致しました。しかしながら、外国では日本人選手というだけで握手を求められ、世界でも日本の柔道、日本選手の美しい投げ技できめる柔道は最高レベルであるという認識はいまだに変わっていないという事を実感しました。世界最高レベルの柔道を知ると共に日本の柔道の良さを再認識した大会でした。

以上、New York Open Judo Championshipsを戦い終えての感想並びに報告でした。