第54回早慶対抗柔道戦観戦記
高野 (引き分け) 大伴
開始早々から激しい立ち技の攻防が繰り広げられた。高野が掬い投げと背負い投げで、相手が内股と体落しで攻め、互いに一歩も譲らぬ展開だった。中盤、寝技にもつれた際に高野が横三角と腕絡みを狙うが、あと一歩のところで相手にこらえられ、チャンスを活かすことができなかった。高野は怪我をおしての試合であったが、好い勝負であったと思う。4年間、怪我やプレッシャーを跳ね返し続けた本当にガッツある選手だった。
伊東 (内股)○ 濱田
先鋒を任された期待の伊藤だったが動きに硬さが見られた。序盤より相手に内股で攻められ、開始1分で一本をとられた。伊東らしい柔道を見せる前に敗れてしまった気がする。持ち味を出せずに終わってしまった悔しさを、今後の成長の糧としてほしい。
岡本 (大外返し・技あり)○ 八嶋
1分半過ぎに大外を返され、その後も釣り込み腰でポイントをとられた。変形姿勢の相手に組みにくそうではあったが、一本を取らせない粘り強さがあっただけに、組み際や技の攻防でもつれた際のチャンスを活かしてほしかった。
兼田 (一本背負い)○ 小川
序盤に兼田が仕掛けた内股で相手が大きく揺らぎ、慶應初白星の期待が持たれたが、50秒過ぎに相手に不用意について行ったところを投げられてしまった。背負いを狙う相手に対しての教訓としてほしい。
大栗 (内股)○ 猪ノ口
善戦及ばず、試合中盤で投げられてしまった。敗れはしたが、大栗は塾高の頃より格段に強くなっている。ペン道着を着て試合に出られるあと2年間のうちに、さらに強くなってほしい。
柴垣 ○(内股透かし) 中山
柴垣らしい粘り強い柔道だった。厳しい組み手で相手の得意技を抑える一方、体落しと小外で攻めたて、3分過ぎに相手の内股を透かしてきれいに一本をとった。善戦しながら敗退した3年間の悔しさを拭い去ることができる、柴垣の持ち味を活かした勝利だった。「粘り強さ(だけ)が持ち味です」と公言していた入部当時が懐かしい。また、有能かつ雄弁なマネジャーであったことも書き添えたい。
松尾 (横四方固め)○ 根本
試合開始1分過ぎに内股で有効をとられた後、抑え込まれてしまった。松尾の柔道に力強さがあれば違った展開であったと思う。今年1年で、一回り大きく成長することを期待する。
今井 (小外掛け)○ 落合
今井は技を出していたが、一息ついたところを相手にうまく合わせられてしまった。今井は持ち味の腕力に柔らかさが加わるともっと強くなると思う。いろいろな相手と稽古をして勉強してほしい。
荒木 (内股)○ 名渕
開始30秒過ぎに内股で投げられてしまった。柔道に力強さがつくようがんばってほしい。
橋本 (引き分け) 鈴木
互いに得意技を繰り出すがポイントには至らなかった。中盤、橋本が横四方を決めるチャンスをつかむが、足が抜けずに引き分け。得意な寝技で決めることができなかったのが残念。
土井 (一本背負い)○ 青木
攻勢に出る前に投げられてしまった。自分と互角かそれ以上の相手と対する際には、自分のペースで試合を運ぶことが必須であることを忘れないでほしい。
中堅 森田 (送り襟締め)○ 宇都宮
森田も、相手のペースに合わせてしまい早々に敗れた。掛け声を出して気合を入れる、最初の技を自分で出す、等々自分のペースで試合を運ぶきっかけをつくる習慣をつけてほしい。
柴山 ○(横四方固め) 宮崎
60キロの柴山に100キロの相手は厳しいかと思われたが、そんな不安を吹き飛ばす快勝だった。常に自分のペースで相手を動かし、背負いで有効を奪ったあとに抑え込んで勝った。タイミングのよい背負い投げも見事だったが、必死に逃げる相手の先を読んで変化する寝技の技術も素晴らしかった。
衛藤 (内股)○ 佐藤
去年に続いての勝利はならず、中盤に内股で投げられて一本。体格の割に動きのある柔道をするのが衛藤の持ち味だが、少しバタついているように見えるのも特徴。滑らかな柔道ができるよう、様々な相手との稽古を通じて勉強してほしい。
平山 (上四方固め)○ 森東
開始早々に背負い投げを返され、そのまま抑え込まれた。大きい相手を投げる技を持っているだけに、その持ち味を出せずに終わったのが残念であった。
吉田 (小外掛け)○ 洞田
元気よく積極的に技を出した吉田であったが、120キロの洞田は強かった。一本背負いで攻め立てるが、中盤に背負い投げを返されて敗れた。試合に出なかった者も含めて、一年生達はそれぞれに持ち味があり、強くなる可能性を持っていると思う。その才能が開くよう、ぜひがんばってほしい。
中山 (上四方固め)○ 石川
開始早々、寝技の攻防となった。中山の得意な展開かと期待したが相手が一枚上手で、あれよという間に抑え込まれてしまった。
二宮 (引き分け) 吉澤
二宮は、けんか四つから得意の背負いと大外を連発して終始攻勢であった。中盤、相手を大きく崩すがポイントには至らず、残念ながら引き分けだった。しかし、徹底的に攻めた積極性はよかった。技に切れが増せばさらによいと思う。
佐藤 (合せ技)○ 谷口
佐藤の切れる技に期待したが、中盤に相手に内股でポイントをとられ、そのまま袈裟固で抑え込まれた。体格差もあったので敗れたことは仕方ないが、抑え込みから逃れる意思が見られなかったのは残念。慶應の主力として力強くなってほしい。
副将 前田 (引き分け) 廣元
両選手ともに技も気合も十分な好勝負であり、2人の攻防に場内も声援で大いに盛り上がった。2年生ながら副将の大役を任された前田は、常に前に出る攻撃的な柔道を展開。3分過ぎに大外で相手を崩して横四方のチャンスをつかむが、相手の必死の防御に阻まれてしまい、そのままポイントなく引き分けた。前田は滑らかな連絡技を身に付ければ、過去の名選手に並ぶことができると思う。
大将 飯島 (袖釣り込み腰)○ 八木
主将として堂々と対峙したが、残念ながら勝つことはできなかった。背負い投げで相手を攻めるが、動きが止まったところを投げられてしまった。しかし、敗れはしたものの、入部当時から飯島主将を知る者として、今日までの彼の努力と成長には賞賛を贈りたい。また、部の責任者としても、部員が減少傾向にあり、学生気質の変化も著しいなかで、柔道部をよく盛り立ててくれたことも評価したい。