この度の柔友会の総会でブラジル支部長を拝命しました関根隆範です。この機会にブラジルの柔道事情についてお話ししたいと思います。
ブラジルは柔道人口50万人とも、60万人とも言われ、日本の23倍の国土の隅々まで道場があります。よちよち歩きの子供達から80歳を超える柔道愛好家までもが、スポーツクラブや学校、柔道アカデミーで日夜稽古をしています。礼儀作法も我々が驚くほど厳格で、柔道連盟では柔道指導者の為の訓練コースや、古式の形や、五つの形も頻繁に講習会が開かれ、こちらが知らないことまで色々聞かれるので、密かに勉強をして、返答している有様です。
ブラジルには、ブラジル柔道連盟が組織化される前から作られたていた日本人を中心とした全伯講道館柔道有段者会という会があります。自分は、その会を通じて昔の学生柔道連盟の中央大学岡野修平さんを中心に、拓殖大学岩船貢さん、早稲田大学石井千秋さん達と、役員としてブラジルの柔道の普及にお役に立てるよう微力を尽くしているところです。
ワシントンの古森義久兄の支援で、彼と非常に親しい元ブラジル大使の池田維大使(元外務省アジア局長、官房長、現台湾台北事務所長)の推薦で、我々の会は外務大臣表彰を受けました。更に、その後、草の根資金と言う外務省の海外文化活動基金の援助も受け、サンパウロ市の中心にある道場の大改装と、新しい畳の購入が実現される準備が整いました。昨年、一昨年のことです。池田大使や古森のお陰で、ブラジル柔道連盟、サンパウロ州柔道連盟から感謝されていますが、それよりも日本人の心を伝えることに役立てる機会になれば有難いことだと思っています。
先月末、世界柔道連盟のセミナーがリオであり、竹内副会長、山下泰裕教育理事、川口審判理事達が来られたので、お会いしました。その際、我々の会では数年前から冨田常雄著の姿三四郎をポルトガル語に翻訳して出版することを夢に描いて努力している話をしました。山下氏は大変共感され、早速応援してくれる事になり、国際交流基金の支援をうるべく応援してくれ、その手続きの準備に入ろうとしています。外務省の方達にも本件を話していただいたようで、少し前に進みつつあります。出版すれば、最初のコストになる数千冊は直ぐに売れる見通しはあり、資金的な援助を何とかできれば後日、その金は回収できる計画でもあります。
ブラジルは世界第10位の経済国に成長はしましたが、貧富の差が激しく、文化的蓄積が必要で、強盗、殺人、汚職、収賄天国で、社会は相変わらず不安定です。そうしたこの国の大きな財産の一つに、日系人社会があり、2世、3世、4世をあわせると約150万人にものぼります。丁寧な礼儀正しい柔道がこの国に普及したのは、農業で移民して苦労し続けた日本人移民が、農作業の片手間に子供達に教えた成果であり、昔の日本人達は自分の子供達だけでなく、ブラジル人の子供達にも分け隔てなく教えた賜物であることは誰もが認めている事実です。
今年の後半からNHKで日系移民の物語が放映されると思います。できたら、どうぞ皆さん楽しみながら、ブラジル日本人移民の話をテレビで見ながらブラジルの一部を知っていただければ幸いと思います。
サンパウロ在住